| 孟村(呉氏)開門八極拳誕生の地、孟村での素晴らしい体験を僭越ながら少しだけご紹介させていただきます。
八極拳のふるさと・孟村へ
孟村開門八極拳に出会ってKCWAでの練習や大会を通して多くの先生方、仲間、武術愛好者のみなさんと出会いました。その中で感じたのは、同じ八極拳でも流派による違い。孟村流の“気迫”には特別なものがあり、もう一度本場で学びたいという気持ちが強くなっていました。2年前に訪れた時、孟村は、よく食べて、よく動いて、よく寝て、また食べて、自然な暮らしの中で八極拳を知ることのできる中国でも特別な場所という印象でした。今回は、八極拳宗家・呉蓮枝老師の80歳のお誕生日をお祝いし、改めて孟村の空気の中で技と伝統を学びたいと思い参加しました。
関西空港から北京へ、そして車で約4時間。大地がどこまでも広がる車窓の景色に「中国に来た!」という実感が湧いてきます。孟村の入り口には「八極拳」の文字とモニュメント。帰ってきた、という気持ちになりました。
呉蓮枝老師との再会
宿舎に案内いただき、中庭へ降りると、2年前と変わらぬ穏やかな笑顔の呉老師が迎えてくださいました。
歓迎の宴では、呉老師と老師のお弟子さんたち(みなさん名高い老師の方々)と円卓を囲みながら、日本に訪問した当時、日本の文化や人々の礼儀正しさに感心したエピソードを交えて日本への思いを話してくださいました。孟村名物の牛肉煮込みや野菜料理、フェンネルたっぷりの餃子など、豪快で滋味あふれる料理の数々。呉老師曰く、孟村の肉、魚、野菜、果物といった食べ物と空気、環境は健康と八極拳に良いとのこと。80年の経験談は何よりも説得力があります。強くなるなら食べねば!と勝手な解釈をしながら食べきれないほどのご馳走とおもてなしに、感謝が絶えませんでした。先輩方が御礼にと千昌夫さんの曲を披露、私も練習しておけばよかったです。
食後はご自宅でお茶をいただき、呉老師自らが自転車で体育館まで案内してくださり、広場での夜の練習風景を見学。広場には小学生くらいの若い方から大人の訓練生が熱心に練習されており、その真剣な姿に胸を打たれました。孟村では、1日中八極拳が本当に生活の一部なのだと感じました。呉老師と見慣れない来客に驚かれたはずですが、呉老師が広場をくるくるとにこやかに快走されているのが分かると、すぐに和やかな空気に変わりました。
本場の八極拳訓練
翌日からは、周老師による行劈拳と対打の特別指導。新しい套路に挑戦しました。行劈拳はシンプルながらも、体のねじり方、力の起点から終点、攻守を少しでも間違えると崩れてしまう難しさがありました。対打では、相手との距離の詰め方、スピード、呼吸の合わせ方、どれも緊張感があり、全身が研ぎ澄まされます。私の腕よりも1周りも2周りも太い腕にどう対応すればいいのか、戸惑いながらも、周老師との組手から伝わる気迫と連動する動作を間近で見て体感しました。普段の練習では気づかない動きの無駄やクセがはっきり見え、悔しさと同時に新たな発見がありました。それでも、王老師や先輩方のサポート、関西のノリで生まれる笑いのおかげで、厳しい訓練も楽しく乗り越えられました。
祝宴と人の温かさ
呉老師の80歳祝宴は、本当に盛大でした。体育館が赤い布で飾られ、呉老師を敬い慕う来賓やお弟子さんたちが笑顔で祝福を送ります。呉昊(ウー・ハオ)老師の特別表演もあり感無量。中秋節の晩餐会では、ご家族やお弟子の老師、訓練生も一緒に揚げ魚と香味野菜、牛肉の煮込み、手作り点心、月餅、スイカやざくろマンゴー等の果物が所せましに積み上げられた食卓を囲み、世代を超えての交流が広がる平和で幸せな空間でした。小さな曾孫さんが老師の肩車で遊ぶ姿に、場の空気が一層和やかになります。外では中庭で2から3Mもあるような棍で腕比べ。孟村のみなさんは、礼儀を重んじ、互いを敬いながら笑顔で接していて、時折日本に行ったことあるよ、日本語でどういうのなど声をかけてくれます。強さと優しさが自然に共存しているのが印象的でした。
また、呉老師が一人ひとりに書をしたためてくださり、美しく力強い筆の動きに、一瞬一瞬に魂が込められているようでした。その様子を、順番を待つ若い訓練生も静かに見守ってらっしゃいました。これも上から下まで技と心を伝える孟村らしい文化だなと思いました。
孟村最終日の朝
呉老師のお誘いで街の食堂で朝食にいただいたワンタンスープと牛肉バーガーの優しい味。呉老師の「おいしい?」の気遣いの言葉が心に残ります。
最後の稽古では、対打の総復習。初日よりも動きが自然につながり、あ、少しは掴めたかもしれない、と思えた瞬間がありました。送迎会で、呉大偉(ウー・ダーウェイ)老師や王老師の兄弟子の老師のみなさんと再び食べきれないほどのごちそうを囲み、旅の無事と日本の八極拳発展を祈っていただきました。
その後、北京へ戻り、頤和園の観光へ。
孟村滞在中に王老師が街中やふるさと滄州鉄獅子博物館(王老師のお父様の写真を発見!)を案内してくださり、歴史や文化を学ぶ機会をいただきましたが、北京では頤和園の観光を用意してくださいました。当時の王朝が命じたとはいえ、大きな人工湖と岡に築かれたお堂の数々は、当時の王朝の力と職人の技術をしのばせます。雨に濡れる石庭と古建築は幻想的で、静かに旅の終わりを告げているようでした。最後の夕食は、雨の冷たさを忘れさせる、本場の四川料理。辛さと香りに舌鼓を打ちながら、この8日間をみんなで振り返りました。
旅を終えて
今回もよく食べて動いて寝る日常的な暮らしを体験して、技術だけでなく、人としての学びに満ちた時間でした。正確な技術、礼節、思いやり、師弟のつながりの深さ、家族の絆が孟村開門八極拳の強さなのだと実感しました。
本来であればプライベートな催しにも関わらず、貴重な体験と安全な旅を提供してくださった王老師、研修での共同生活でお世話になったみなさん、送り出してくれた家族と職場のみなさんに心より感謝します。(文:飯田陽子)
2025年10月2日?9日まで、滄洲孟村・北京の旅に参加しました。私は今年で8度目の孟村訪問となります。今回の最大の目的は、呉連枝老師80歳お祝い会の参加です!前回はお孫さんの呉昊先生の結婚祝いという一大イベントに参加させていただきましたが、今回も80歳という記念すべき日を一緒にお祝いできるということで、ワクワクドキドキで旅立ちました。2年ぶりの孟村では、呉昊先生のお子さんも誕生し、まだ0歳の王子は孟村のアイドル!みんなメロメロ、ニコニコでいつも以上に暖かい雰囲気でした。今回は中国の大型連休と重なり、八極拳訓練センターでも講習会が行われ、中国各地から沢山の愛好家が参加されていました。私たちは特別メニューで講習を行っていただき、行劈拳、六肘頭、対打を周教練に教えていただきました。動作の細かな説明や、丁寧に何度も教えてくださりとても勉強になりました。呉連枝先生80歳お誕生日会は第8世、9世、10世のお弟子さんや関係者が全国から沢山集まり、獅子舞のお祝いなど盛大に行われました。今回、久しぶりに鉄獅子も観に行き、鉄獅子の周りが以前訪れた時と様変わりして立派な公園になっていました。
孟村での5日間の研修を経て、北京へ。世界遺産の頤和園を観光しました。あいにくお天気は雨でしたが、湖と空の境が消えて、一枚の水墨画のようでした。建物の朱色、屋根の黄色、回廊の絵もしっとり落ち着いて情緒的でした。今回の度も想像以上の出来事ばかりで夢のような日々でしたが、今後も引き続き練習に励みたいと思います。毎回とても貴重な機会を与えてくださる王老師、暖かく接してくださる神戸開門八極拳研究会の皆さんに心よりお礼申し上げます。(文:鉄獅子舞子)
孟村八極拳合宿
「拳児の世界を体現!八極門は皆家族」2025年10月
開門八極拳を初めて2年。初めて孟村合宿に参加させて頂きました。
中国への上陸自体も初めてで、王先生とベテランの先輩方におんぶに抱っこの状態で大変お世話になりました。
八極拳を始めてから、“レジェンド”松田隆智先生がモデルで原作の、有名な八極拳漫画「拳児」を全巻買って読みました。
「八極門に入った者は全て家族」という世界観が魅力の作品ですが、孟村に着いて早々、漫画に出てきた場面さながらに、自分が体現することになろうとは夢にも思いませんでした。
「歓迎会」と称して映画に出てきそうな立派な中国料理店の個室にて、呉連枝老師をはじめ、重鎮の老師方々と円卓を囲み、共に夕食を頂いたのです。次から次に運び込まれるご馳走に驚きながら、先輩に作法を教えてもらいながら戴きました。老師方々は大変親切で、緊張もほぐれました。
その夜、メインの立派な体育館「八極拳展演舘」を呉連枝老師自ら案内してくださいました。その後、なんと老師の三輪車の後ろに乗せてもらって宿舎まで送って頂くという信じられない体験をさせていただきました。世界的に有名な呉連老師は、もの凄く優しく、ユーモアがあって、どこか可愛く感じました。
周先生から教わった5日間の集中合宿では、神戸でもやったことのない、行劈拳(しんぴけん)を前半に習い、後半では対打を習いました。
YouTubeや、先輩方の過去動画で何度も見た練習場や、展演舘のホールで汗をかいて練習できた事は本当に幸せな体験でした。庭や、食堂などですれ違う八極拳士の皆さんも毎日親しみを込めてにこやかに挨拶してくださり、「八極門に入った者は全て家族」という感覚をいつも感じることができました。
メインイベントの呉連枝老師の生誕80周年祭、中秋節も体験させて頂き、中国文化の華やかさを感じました。なかなか日本では体験できない事です。
呉連枝老師が一人一人の顔を見てインスピレーションで書を書いてくださるという事で、私も一筆書いていただきました。カッと目を見開いて私の顔を数秒見ただけですらすらと「紫氣東来」という言葉を戴きました。意味はよくわかりませんが、美しい色合いを感じます。感激です。ありがとうございます。
普段からKCWA開門八極拳メンバーといると、家族のような温かみを感じられるのは孟村の文化を継承しているからかなと、腑に落ちた孟村合宿でした。(文:孟村らぶ子) |